アンビエント・ファインダビリティ
先月の「Web標準の日々」のユーザーエクスペリエンスセッションで“インフォメーションアーキテクト界の偉いヒト”と紹介されていた、ピーター・モーヴィル氏の著書。
他に、ヤコブ・ニールセンとドナルド・ノーマンという、“ユーザーインターフェイス界の二大長老”もいるので、追々本を読んでみようと思っています。
以前読んで面白かったインフォメーションアーキテクト=情報構造の本は、リチャード・ワーマンの『理解の秘密 -マジカルインストラクション』。
こっちはWebよりも、紙媒体寄りの本ですが、オススメです。
じつは、この『アンビエント・ファインダビリティ』、前に一度読んでいたけど、そのときは何も書かなかったので、今回改めて読み返したのを機会として、簡単な感想を書いておこうかな、と。
前回は、面白すぎて感想もなにもまとまらず、「うわー!うわー!」と興奮した記憶だけ残っています。
オライリーの本は、シンプルで図版もあまり無い、シンプルな本が多いのだけど、この本はカラーの図版と、脚注がとにかく多い。私もそうだけど、読者は“Treo”、“M.C.エッシャー”、“スパムエッグソーセージスパム”と次々並べられて、すぐに何のことかピンとくる人ばかりではないからね。
あと、ギーク的なジョークもほどほどに入っています(笑)。
オライリーは技術系の本メインの出版社なので、ここの本は、どうしても教科書とか解説本というイメージがありますが、この本の文体は、論文とエッセイの間くらいでややくだけた感じ。
構成は、ミクロからマクロまでの情報構造を、歴史的に過去から未来へ、または技術的な区分、単純から複雑へ、視点を変えながら追いかけていく、エキサイティングなもの。
情報とコミュニケーションのウサギを追いかける、不思議の国のアリス。
…意味不明ですみません。
とにかく、モーヴィルおいちゃんと一緒に、面白そうな話と図を見ているうちに、ウェブと検索、メタデータと集合知、効果的なインストラクション、などなどについてお勉強できちゃうよ♪という本です。
表題の“アンビエント・ファインダビリティ”は、いつでもどこでも、必要なもの(と情報)を見つけられる世界を言い表した言葉。
日本だけでおなじみの言葉、“ユビキタス社会”みたいな感じで、もっと自然に技術と人が相対しているイメージの言葉だと思う。正直、“ユビキタス社会”という言葉は意図と意味が通ってないので、はやく絶滅してほしい。
家でも会社でも、外出先のカフェでも、いつでも好きなときにネットに接続して必要なことをそこで知ることができる社会に、近づきつつあって、それはどのように出来上がって来て、今どのような状態にあって、これからどのような方向に向かうのか、というのが書いてあるんだな、というのが伝われば、この駄文にも、ちょっとは良いところがあったということですね。
私個人に引き寄せれば、IT土方(Webデザイン土方部門ね)の末端を汚している者として、“ファインダブルな情報がアンビエントに存在する社会”を構築するために、どういうことを考えれば良いのか、という大きな指標になります。
こういうことも考えつつ、ちっちゃなアイコン、本文コピー、htmlとCSSコーディング…etcはどうあるべきなのか、実行段階まで少しずつ落とし込んで行けたら、やっつけ仕事な土方じゃなくて、数年スパンで見ても、良い土方になれるような気がするんですよね。