素材配布と直リンクと著作権にまつわる雑感

2009年11月11日

先日、@macaron99 おねえさん迎撃晩ご飯の会で、@yuzpon が運営するウェブサイト向けの素材サイトで、困ってることの話が出ました。
その一つが「直リンク」。
素材配布サイトでは、基本的に画像をローカルにダウンロードし、それを各ユーザが自分のサイトスペース/サーバにアップロードして使うべし、という利用規約を定めていることが多いです。
利用規約にははっきりとローカルにダウンロードすることを定めているにも関わらず、配布サイトに表示されている画像のURLをコピーし、その画像を自サイトに呼び出す行為、これが「直リンク」です。…合ってるよね?
これをやられると、他人のサイトがロードされるたびに、素材配布サイトも呼び出しをされるので、実際のアクセス以上の負荷がかかり、迷惑というワケ。
実際にやらかしてくれちゃってるのは、携帯電話だけで作れるような出来合いサイトの持ち主や、ファイルアップローダのついてない、ごく限定された機能しかついていないレンタル掲示板やプロフなんかの持ち主がメイン、あとは海外の人だそうで…。
ま、要はド素人がなんも知らんとやっちまってる…ということなので、難しい話しても「わかんないかなー わかんないだろーなー」ってなもんなんですが。
大手ニュースサイトだと、ITmediaが画像に対する直リンクを技術的に禁止していたりするんですが(.htaccessだったっけか)、そういう大手でも嫌がるくらいなので、個人が運営している素材配布サイトだと、当然専用サーバだったりすることは稀だと思いますし、最悪レンタルしているサーバ屋さんから追い出しをくらうこともあるのではないかと推察しています。
で、この「直リンク」、技術的に回避したり制裁を加えたり、是非を問うのは、/.の諸兄を始めいろんなところでいろんな議論があると思いますので、そゆのが好きな人はそういう記事を探してください。
おいら自身、素材配布については「見本画像は外部CSS使って背景に貼って、ダウンロード用のはzipかなんかで圧縮しとけばどうだろう」と思っているんですけども…。外部CSSの中身覗いてパス調べて直リンク貼る、ってよっぽどですからネーw
今日たまたま契約書作るのに、著作権関係の資料を色々見たので、もわもわと思った事、感じた事を書き留めておこうと思いマス。
1か月くらいすると忘れちゃうんでね…。
著作権、とひとくちに言いますが、著作物に関わる権利=著作権と、その著作物を作った人に関わる権利=著作者人格権というのに分かれるというのは、ウィキペディアあたりで著作権の項目を読んでると出て来ますよね。
音楽関係なんかででてくる「著作隣接権」ってのもあるんですが、それは横へ置いといて。
「著作権」は財産権の一種で、譲渡したり相続したりできると。
著作権法には(今日全文読みましたが)条文がなくて明確な規定はないようですが、財産権のパターンにのっとると、公に告知(新聞広告とかニュースリリース的な規模で)することで「放棄」も一応できるようです。
この権利には著作物を複製したり、作り替えたり、公共の電波に乗せたりする、それぞれ派生する権利があります。この著作権はその著作物を作った時点で、作った人に発生します。特に申請もなにも必要ないと。
デザインの仕事をしていると、業務としてクライアントから頼まれたものを作ることが多いですが、その場合も特に契約条項に取り決めがない限り、その著作権はおいらの所属する会社にあります。(大企業の場合は法務さんがしっかりしているので、仕事を始めるときに、成果物の対価として制作料を支払い、その時にここからここまでの著作に関わる権利をクライアントに譲渡する、というような契約にハンコを押さないと、現実、仕事をさせてもらえませんががが)
一方、著作者人格権というのは「人格権」の一部で、この権利は誰かに移動したり譲ったりできない権利とのこと。条文によると、作者の感情を守るための権利、だそうです。平たく言うと、これを作ったのはわたしデス、と言うための権利でしょうか。
著作物を作った人にだけある権利なので、契約で他の権利を制作料と引き換えに譲渡(仕事場では “売り切り” と俗に言いますが)しても、これだけは作り手さんに残ります。
この権利にはこういう権利が含まれます。
公表権=著作物を公表するかしないかを決める権利
氏名表示権=その著作物の作者名を表示するかどうか、また、表示に実名を使うか変名を使うか決める権利
同一性保持権=著作物を著作者の意図に反して改変/変更/切除されない権利
(このあたりの項目はクリエイティブコモンズライセンスでみかける用語なので、理解しやすかったです)
たまにいらっしゃいますが、よそのサイトで入手した素材を自分が作ったものとして配布する人、いわゆる「無断の再配布」(元の配布サイト閉鎖で後事を託されたのとは別です)は、もとの作者さんの著作者人格権を侵害しているのと、著作権法第121条の「著作者名詐称の罪」にあたるので、ダメなんですね。
この「著作者名詐称の罪」は詐欺の防止のための項で、犯罪だそうです…。
で、次にウェブサイトに自分の作った画像やhtmlを載せて公開するというのは法律で言うとどういうことなのかなぁと思ったら、著作権から派生する公衆送信権の「自動公衆送信」にあたるとのことです。(プログラムについては取扱いが別になります)
「自動公衆送信」は受信者が選択した著作物が自動公衆送信装置(サーバのことでしょうね)によって送信され、受信者の手元に受信されること、とのことです。公衆送信権は著作物をサイトに公開するかどうか決めるとこまでカバーしてる権利なんですね〜。
では、サイト上で自分の作った素材を配布するというのは、どういうことなんだと。おいらは法律の専門家ではないので断言はできないのですが、配布する作者さんが利用規約で定めた手法/範囲に限り、ダウンロードした人の「複製権」と「公衆送信権」の行使を「許諾」(譲渡じゃないですヨー)しているんじゃないかと。
利用規約を承認するかどうか、はい/いいえのページ、あれもれっきとした契約になるんだそうで。口頭ではなく、明文化されているし、はい/いいえ がなくても利用規約にその素材を使った時点で承認したとみなす、と明記されていればやっぱりそういうことです。
当然、明文化された規約を作らないであとから文句言うのはルール違反です。
次に、自分のものではないサイトにある画像・コンテンツを、引用ではなく、無断でそのまま自分のサイトの中に取り込み、さも自分のサイトのコンテンツのように扱うのはどうなんだろうと。(APIが公開されてたり、マッシュアップのための態勢を敷いているのは無断じゃないですね、念のため)
具体的に例を言うと、他のサイトのあるコンテンツを、許可なくフレームとかインラインフレームで切り取って自サイトのコンテンツとして使う…のはどうなのかなぁと。
思っていたら、(社)著作権情報センターの配布している資料PDF『デジタル・ネットワーク社会と著作権』の中に、そういう事例のQ&Aがありました。
無断でリンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか。の最後の段落です

「もっとも、クリックすることにより、他人のホームページ上の情報が自分のホームページのフレームの中に取り込まれるという形式のものであれば、話は別です。このような場合、自分のホームページの中に他人の情報を複製することになるので、複製権の処理が必要になってくるように思われますし、また取り込む情報が一部分であるならば不要な部分をカットしたということで同一性保持権も働く可能性があるからです。」

無断リンクは禁止かどうか?というQ&Aですが、無断リンクが嫌なら会員制かパスワードロックしておきなさい、という文言のあとに上記の段落が出て来ます。意外w
他人様のサイトを、サイトの持ち主の許可を得ずに勝手に切り取って自分のサイトにまるっと取り込むのは、著作権の複製権と著作者人格権の同一性保持権が微妙なんじゃないの、という懸念です。
一番最初の「見本として表示されている配布サイトの画像のみを抜き出して自サイトに使用する」っていうのは、著作者人格権でなんか微妙なんですねぇ。先の利用許諾の範囲から出ちゃってることを無視しても…うーん、どうなんだろう。
あと、海外の人による利用許諾の範囲を越えた使い方については、ベルヌ条約という国際的な著作権の取り決めを批准している国とそうでない国で取扱いが変わるようですが、批准している国の場合、日本人の著作物もその国の人の著作物と同様に保護される、ということだそうですので…
今度いっぺん中国の著作権の資料を読んでやらなきゃなぁ!ふひひ!と思った次第。(中国はベルヌ条約批准国です)
いろんな決まり事があるとはいえ、どう対処するかはサイト運営している各人が決めることなので、唯一絶対の正解はないんじゃないかと思いマス。
法律で定められた権利に基づいて侵害の差し止め請求なるものをやってみるもよし、プロバイダの責任範囲に基づいて対処してもらうもよし、技術的になにがしかの手を打つもよし。
とまれ、著作権のあれこれ、ご一読をおすすめいたしマス。
自分が侵害する側にならないように、また、現行の著作権法の問題点を考えられるように。
今回分かりやすかった資料はこちら。
文化庁:「著作権に関する教材,資料等 内 著作権テキストPDF」
文化庁:「著作権Q&A ~著作権なるほど質問箱~」←用語集が良かったデス
(社)著作権情報センター「デジタル・ネットワーク社会と著作権